≪Blog≫ベトナム人にとっての食事と家族
ベトナム人にとっての食事と家族
ベトナムからの技能実習生と話をしていて、
「時間の合う日や休日の夕食は、
共同生活を送っているメンバー同士で一緒に食事をとるようにしている」と
聞く機会が多いと感じます。
「必ず1人で食事をとる」という人は滅多にいません。
ベトナム人は寂しがり屋なのかな?
とこれまでは深く考えていませんでしたが、
どうやらベトナムの食事習慣が関わっているようなのです。
今回はベトナムの食事習慣について、
弊社ベトナム人スタッフの立場からご紹介いたします。
◆ベトナム人が食事をする時の習慣◆
“家族が第一”と考えるベトナム人の特性が、日常の食事にも影響を与えています。
ベトナム人にとって、家族との食事は当然なことです。
これから、食前・食事中・食後と3つのタイミングに分け、
わかりやすくご説明したいと思います。
ちなみに、ベトナムでは通常、二・三世代の家族が同居している光景が多く見られます。
【食前】
食前の最初のマナーは、必ず一番年下の人から順番に、
家族全員へそれぞれ「ご飯をどうぞ」と言う事です。
年下の人から順に、
「おじいさんどうぞ、お父さんどうぞ、お母さんどうぞ・・・」と声をかけます。
その順番が全員に回ると、食事が始まります。
さらに、守らなくてはならない厳格なルールもあります。
それは、年上の人のお椀から順(例:祖父母⇒父母⇒子ども)に白飯を盛りつけ
なければならないという事です。
また、いちばん年上の人が食べ始めると、それを合図に皆も食べ始めるようにします。
【食事中】
食事中、お年寄りと子供はご飯をよそってもらったりして、
お世話をしてもらうことが多いです。
年齢や役目などにより、座席の位置が決められます。
ベトナムではお母さんや娘などの女性たちがご飯を盛る役割を担うため、
炊飯器の横にいることが多いです。
また、すぐに物を取りに行ったりできるように、
炊飯器はいつも、女性の側の、邪魔にならない所に置いてあります。
料理は大皿やどんぶりに盛りつけられ、それぞれが自分のお椀に食べたい分を取ります。1人にお椀が1つ、お箸が1膳というのが基本スタイルで、取り箸はなく、
全員が自分の箸で大皿をつつきます。
ベトナム人は一つのお椀にすべて入れて食べるという特徴があります。
白飯やおかず、スープも、です。
また、お客さんが来たときでも、自分が使っている箸でお客さんに料理を取ってあげたりするのが普通です。
実は、ベトナム人にとっては、食事では空腹を満たすよりも、
家族の絆を築くほうが大切です。
食事の間に、お互いの仕事や学校などで一日何かあったか、
お互いに分かち合うための大切な時間です。
多くの家庭では、食事の時間はだいたい夜7時ごろで、
その時間は国営放送のTVニュースが放送されるので、テレビを流しながら、
社会問題やお互いの問題を話し合い、議論したりします。
一番騒がしい時間です。
しかし、ベトナム人は礼儀正しい食事をするように気をつけます。
例えば、口の中に食べ物が入ったまま話すのはダメ、
食べているときはカチャカチャ音を立てはいけない、などです。
食事中によくしゃべる一方、口の中に食べ物が入ったまましゃべってはいけないということがあるため、普通より食事時間が伸びてしまいます。
【食後】
食後は先に食べ終わった人から退くのではなく、
一番年上の人が食べ終わるところまで、全員が待機しないといけません。
ベトナムでは昔から、家事を主にこなすのが女性の役割だとされているため、
ご飯作りや食卓の片づけするのも女性が多く、特にお母さんや娘などが、
全員が食べ終わるのを待ち、後片付けをします。
◆日本に来て感じる、食事習慣のギャップ◆
日本で育った方からすれば、ベトナム人の食事習慣は独特だと思われるかもしれません。
しかし、日本人が食前に「いただきます」、食後に「ごちそうさまでした」と言う習慣は、
ベトナム人にとって新鮮です。
料理の盛り付け方や取り箸などの細かい点も、
ベトナムと日本では違いがあると気が付きました。
例えば、スープや料理をあらかじめ人数分に分けておくという日本の習慣は、
ベトナムとは異なります。
しかし、最も大きな違いは、食事中の様子です。
ベトナムではお互いに大きな声で話しながら食事をするのが当たり前ですが、
日本では食べることに集中するのが良いマナーとされています。
そして、食べ終わったらそのまま席を離れる人も多いという印象を受けます。
また、食事中に話す場合は、口の中が見えるのを防いだり、つばが飛ばないよう、
エチケットのために声のボリュームを下げることが普通となっています。
そのため、ベトナムより雰囲気が静かだと感じます。
さらに、日本人は仕事や生活に忙しいため、
いつも家族が全員一緒に食事をするわけではありません。
一方、多くのベトナム人にとって食事(特に夕食)は家族団らんの時間という位置づけになっています。
日本で生活している技能実習生が、なるべく他の人と一緒に食事をとりたがるのは、
「食事=家族で騒がしく、楽しく行うもの」という習慣が身に染みついているから
なのです。
現在はコロナの影響から、なるべく一人で食事をとるよう、
ベトナム人技能実習生に指導をしている企業様も少なくありません。
しかし、ベトナム人にとって「一人での食事」は、自らの習慣から外れた行為であり、
想像以上に孤独感を伴うものだということ。
そして、ストレスの要因にさえなってしまうことを、
心に留めておいていただければ幸いです。
食事に限らず、越日の生活習慣の違いを挙げたらキリがありません。
ですが、そのギャップは日本で生活するベトナム人にとって、
確実にストレスの種となります。
“郷に入れば郷に従え”という精神を伝えることは大切ですが、
彼ら・彼女らの習慣に寄り添う形でのサポートも並行して出来るよう、
弊社としては引き続き心掛けてまいります。