≪Blog≫新年の迎え方の違い~旧正月を大切にする他国への理解を大切に~
新年の迎え方の違い
~旧正月を大切にする他国への理解を大切に~
2021年もあと2週間。
コロナウイルスの感染が拡大していた昨年とは違い、
今年は帰省や旅行など、年末年始に家族や友人、
恋人と過ごす計画を立てていらっしゃる方も多いのではないかと思います。
新年を祝う風習というのは世界共通ですが、
その中身は国や地域、文化、民族によって千差万別です。
世界標準のカレンダーは太陽暦に基づいて作成されています。
太陽暦の1月1日を祝う動きは、現代において、一部を除きどの国でも見られる光景です。
しかし、太陰暦(=月の満ち欠けを基にした暦)を重んじている
アジア諸国の人々にとって、太陽暦の1月1日は「お正月」ではなく、記念日として祝う感覚があります。
現に、筆者が数年前に年末年始を台湾で過ごした際、
12月31日の夜から1月1日までは祝賀ムードに包まれていたのですが、
2日からは日常生活に戻っていたのが印象的でした。
太陽暦のカレンダーと照らし合わせると、太陰暦の正月(=いわゆる旧正月、中華圏では春節)は日にちが毎年変わります。
2022年は2月1日が旧正月にあたり、イスラム教圏を除くアジア各国では、
大勢の人がこの日に合わせて長めの休暇を取り、大々的にお祝いします。
ベトナムでは旧正月のことをTết(テト)と言い、1年のなかで最も重要な行事と位置づけられています。
テトには3つの大きな要素があるのだそうです。
(1)一年間に起きた嬉しかった事、悲しかった事などをすべて振り返り、
悪い事を旧年に置いて、良い新年を迎えること。
(2)故郷へ帰省し、家族や親戚と一緒にお祝いをして新年を迎えることによって、絆を深めること。
(3)先祖の霊を呼び寄せて供養し、先祖へ尊敬や感謝の気持ちを伝えること。
(1)(2)は日本も同じなので親近感を覚えますが、(3)についてはベトナムと日本とで様相が異なるため、
隔たりを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
現代の日本における正月行事は、年神様を自宅にお迎えし、健康や幸福を授けて頂くために
おもてなしをするという神事とされています。
一方、(3)の要素は仏教の考えに基づいています。
ご存知のとおり日本では神道だけでなく仏教も深く根付いています。
そのため、実は日本の正月にも(3)の要素が含まれており、越日で似通っていると言えるのです。
祝う時期こそ違えど、似た要素を持つベトナムと日本の正月。
それでは、正月を迎えるにあたっての習慣はどうなのか、比較していきます。
大掃除
—ベトナムでは—
家を整え、不運を呼ぶものを片付けて良い新年を迎えるという意味で大掃除をします。清掃時期は年末です。
—日本では—
年神様をお迎えするために家中を清めるという意味合いがあります。
正月の事始めである12月13日から掃除を始めるのが吉とされていますが、
忙しい現代においてはさほど意識されなくなり、年末一斉に掃除をする人が多くなっています。
お供え物
—ベトナムでは—
ベトナムではテトを迎えるにあたり祭壇を設置します。そしてお供え物として、5色5種類の果物が不可欠です。
多くのベトナム人は古代中国の五行(金・木・水・火・土)思想を信じています。
その五行に対応する色の果物を捧げて祖先へ孝行し、家内安全や平和を願います。
—日本では—
日本では正月専用の祭壇を用意する人は少なく、家に神棚や仏壇がある場合は、そこに特別なお供えをします。
神棚には年神様の在所であることを示す鏡餅を供え、しめ縄で飾り付けをし、仏壇には先祖供養のため、
より豪華な仏花を飾ったり、鏡餅や線香などを供えたりします。
このようにして、年神様や祖先へ1年の安泰を願うのです。
家の飾りつけ
—ベトナムでは—
ベトナムの人々は、桃やロウバイ、キンカンなどの木を家に飾って新年を迎えます。
どの木を飾るかは地域によって異なります。この際、ベトナムではたくさんの芽が出ている木を買う習慣があります。
芽が多ければ多いほど、旧年に比べて新年の幸運や健康運が増すと信じられています。
—日本では—
日本では悪い運気を追い払い、年神様や先祖の霊を迎え入れるため、門松やしめ縄で家を飾ります。
新年の迎え方について細かい所を見ると、似ている点もあれば全く異なる点もあります。
しかし、両国とも新年の幸運や健康、安泰を祈るところは同じです。
日本では馴染みのない旧正月ですが、実は東・東南アジア内で旧正月を盛大に祝わない国は大変珍しく、
アジアの他国からすれば日本の魔訶不思議の一つです。
先にも述べたとおり、ベトナム人にとってテトのお祝いは1年の最重要行事です。
日本に住むベトナム人にとっても例外ではなく、長い休暇は取れなくてもせめて2、3日は休んでお祝いをしたい!
と心の中では強く願っています。
ベトナムに限らず、旧正月を祝う国からやって来た就労者に雇用者側のほうから旧正月休みを与えると、
皆さん大変喜び、仕事もやる気になってくれます。
逆に、旧正月だから有休を取りたいという願いを「日本では旧正月を祝わないから」と却下してしまうと、
彼ら・彼女らの士気が大幅に下がる恐れがあることを、忘れてはいけません。
毎年の旧正月の日にちは先々まで決まっており、ネットですぐに調べられます。
アジア圏からの人材を雇用されている方で、これまで旧正月を意識した事のない方や、
旧正月の休みを認めたことのない方は、労いの意味でも、ぜひ旧正月休みをプレゼントしてみてはいかがでしょうか。