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【ブログ】外食業分野の特定技能2号試験

外国人が「外食業特定技能2号」の在留資格を取得するためには、長年の実務経験等により身につけた熟練した技能が求められます。

 

まず、実務経験として、食品衛生法の営業許可を受けた飲食店で、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての、2年間の経験が必要です。さらに、「外食業 特定技能2号 技能測定試験」への合格が条件となります。

 

しかしこの試験、たとえ熟練した技能を身に付けている外国人材であっても、乗り越えるのは決して容易ではありません。なぜ容易ではないのか、今回はその辺りをご紹介いたします。

外食業の特定技能2号人材には、日本人との区別なく管理職として店舗経営に携わる能力を有することが期待されています。そのため、日頃の業務に関わりのある①衛生管理 ②接客全般 ③飲食物調理 、そして管理職に求められる④店舗運営の、計4項目から出題されます。

公式の学習テキスト(日本フードサービス協会のホームページにて無料でダウンロードが可能)も4冊に分かれており、2号志望者は業務の合間や休日に時間を割き、学習に力をそそがなければなりません。

広範囲をまんべんなく勉強しなければならないだけでも大変ですが、学習テキストの記載内容を日本語学習者の目線で見ると、ハードルの高さがさらに窺えます。以下の2つはその具体例です。

 

● 漢字語彙の多さ

テキストには、“ルールや規則を守ること”の重要性を説明している箇所がいくつもありますが、規則を「守る」ではなく、「遵守する」という表現が用いられています。他にも“あいさつ”は「挨拶」という漢字表記に統一されていたり、“AまたはB”もわざわざ「A又はB」と漢字になっていたりと、外国人材(中華圏出身者を除く)の鬼門である漢字が多用されています。

外食業特定技能2号に求められる日本語能力要件はJLPT  N3以上ですが、「遵守」「挨拶」「又は」はいずれもN1レベルに相当する難解な漢字で、テキストに付いているふりがなの助けを借りれば何とか読むことができるという人が多数です。

にもかかわらず本番の試験にはふりがなが一切ありません。つまり、N1レベルの漢字能力を有している、あるいは、テキストに何百、何千と登場する漢字語彙を意味も含めて丸暗記して臨まなければ、問題文を読んで理解する事すら困難な可能性があるのです。

もちろん、外食業の専門語彙は漢字を見て理解できることが求められる部分もあります。ところが、「遵守」や「挨拶」など一般的な語彙であっても漢字表記を100%理解できなければならないのは、学習者にとって少々酷ではないでしょうか。

 

● 文章表現の難易度

N1取得者でも自力で正しく読解する事が難しい所もあります。

たとえば「駆除作業をおこなわなくても差し支えありません。」という衛生管理テキストの一文。文末が否定形なので、「~なくても差し支えありません」という表現の意味を知らなければ、“おこなわないのはダメ”と勘違いしてしまいます。おまけにこのような曖昧表現は、翻訳アプリを使っても正確なニュアンスで訳されない恐れがあります。

また、公的な文章等から引用されているケースもあります。たとえば消費期限の説明は「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化にともない安全性を欠くことになるおそれがないと認められる期限を示す年月日のことで開封前の状態で定められた方法により保存すれば食品衛生上の問題が生じないと認められるもの」となっており、食品表示法上の定義文がそのまま引用されています。消費期限は外食業従事者にとって基礎知識の1つですが、この文章を読むと、これまでの自分の知識が正しいのかと、学習者はかえって混乱しかねません。

 

・・・以上のとおり、「要件とされている日本語能力」と「試験で実際に求められる日本語能力」が大きく乖離していることが、特定技能2号を志す外国人材の前に壁として立ちはだかっています。

(せめて、本番の試験で、要件であるN3を超えるレベルの漢字語彙にはふりがながあり、文章表現が全体的に少しでも読解しやすいものであれば、外国人材も必要以上のストレス無く合格を目指せるのですが…)

 

第1回試験の合格率が極端に低かったわけではありませんが、生半可な勉強では不合格になってしまうおそれが十分あります。専門知識の定着と日本語能力の向上に向け、早急に準備を始められることをお勧めする次第です。